自閉症児への望まれる環境とケアについて


神戸青少年支援協会理事    

 
 明石養護学校教諭  東川 博昭



以下の数字を見てください。

障害者の数(年齢別)平成12年度、平成13年度の厚生労働省による調査等の数字
身体障害者(児)  65歳未満の者 41%
           65歳以上の者 59%
知的障害者(児)  65歳未満の者 97%
(自閉症を含みます) 65歳以上の者  3%
 
何がわかるでしょうか?
知的障害者の65歳以上の者の数が極端に減っています。これは生活習慣病によって早く亡くなっているからです。

 今回は生活習慣病の危険因子の一つである肥満について考えてみたいと思います。


 肥満児に対しては、食事指導と運動指導が中心になります。


 自閉症児に対する
食事指導については困難な点がいくつかあります。


  まず一つ目は、食へのこだわりと食事制限に対するパニックです。奇声や大声で暴れるため近所に配慮するあまりやむなく食べさせてしまったり、他傷行為(たたく、つねる等)、自傷行為(たたく、かむ等)が出現し、食事制限ができないことがあります。


 二つ目としては、指導による他への転化があります。学校などでの指導により家庭での精神的不安定あるいは行動異常が起きる場合があります。


 三つ目は、感覚過敏などからの偏食指導の困難さです。


 四つ目は、コミュニケーションの難しさがあげられます。


 五つ目は、食事指導に対する理解度と自覚の問題です。


以上のような困難な点に注意しながら早期に取り組み、教育と医療と保護者とが連携をとっていかなければならないでしょう。


運動指導についてはどうでしょうか?


 もっとも問題なのは、脂肪燃焼・肥満解消に結びつく運動を毎日できるかどうかです。しかし、肥満児においては動作が緩慢で、持続力がない、運動が嫌いの人(児)が多いです。それでも学校在学中は定期的に運動できていますが、卒業後は定期的な時間を作ることや運動を行う場所の確保が難しいです。また、保護者には付き添って運動できるだけの時間的および心理的な余裕がありません。
食事指導については、なんとかできる可能性がありますが、運動指導については非常に難しいものがあります。小さなときから運動好きになるように専門的にスモールステップを組んで指導してくれて、学校を卒業したあとも生涯スポーツができる環境と専門家によるケアがあればよいなあと思います。
さて、みなさんはどう思われますか?



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