「一(いち)家族の夢をみんなの夢に…

            本当に必要な障がい者の環境つくりのために」

神戸青少年支援協会 設立発起人    
常務理事 松 林 直 英 
神戸市垂水区小束山1丁目1−3−303
電話078−795−9344    
(携帯)080−1496−6426  

 月に一度の、知的及び身体障害の子供たちを集めた大学生ボランティアによる託児ボランティアを続けて3年が経ちました。今夏には初めて、念願だった、“親から離れての一泊キャンプ”に行って来ました。赤穂の海はきれいでしたが、安全上の配慮から、海へは入らず、持っていったビニールプールで水遊びをしたり、スイカ割りや花火をして楽しくキャンプを過ごしてきました。せっかく来たんだから海に入れてあげたい気持ちはあったのですがとても残念でした。

それでも、子供たちは本当に楽しそうでした。元来水遊びが大好きな自閉症児(知的障害の枠に入ります)は幼少の頃は、あまりの水好きさがわざわいしてしまうことがたくさんあったものです。公園の水のみ場を占領して突然服を脱ぎだしてリーダーたちをびっくりさせたり、ショッピングセンターの噴水の中に平気で服のまま入り込んで店員さんをおどろかせてしまったり、学校のトイレに走りこんだかと思えば水道の蛇口をひねりっぱなしにして床を水浸しにしてしまったり…とかで、多くのお母さん方や周りの者たちを困らせたものです。そのくらいに多くの自閉症児は水が大好きなのです。

キャンプでは、水遊びをする子供たちと、ケアをする学生ボランティアたちの楽しそうな姿に感動を覚えながら、水遊び一つとっても、少しづつではありますが、遊び方が変わってきていることに気がつきました。着実に遊び方が熟練してきているんです。障がいの種類や程度は様々ですが、障がい者それぞれに必要とするケア(サービス)の内容も質も、一人一人の成長に合わせてやり方を変えていかないといけないことに改めて気づかされたキャンプだったように思います。反省会で学生ボランティアたちから、一人一人の課題が見えてきたように思うという趣旨の発言が飛び交う中、会うたびに子供たちが太ってきていることに気づいたリーダーがたくさんいました。

もちろん親御さん方は自分たちの子どもが、運動不足と食事過多によって肥満になっていることを認識していらっしゃいます。しかし、言葉によるコミュニケーションを取ることが苦手な知的障がい者に食事制限を強いることは非常に難しいことなのです。なぜなら、食事のときに見せる、ウソのない彼らの笑顔は、親にとって何物にも変えがたいものであるからです。私たち知的障がい者の親の多くは、言葉で伝えられない情報を彼らの動作や表情から読み取ろうとしています。食事をしているときに見せる彼らの笑顔…私たちはそのかけがえのない笑顔を見るために、まさに彼らと暮らしていると言っても過言ではないのです。

 ではどうすれば肥満を防ぐことができるのでしょう。

食事制限が難しいとなれば、運動することによってカロリーを消費させてやることが必要になります。知的障がい者の多くは早死にと言われています。その多くは肥満による肝機能の不善によるものです。知的障がい者が運動をすることは、精神的なリフレッシュになるだけではなく、健康を維持し、命を守るためにどうしても必要なことなのです。

 しかし、知的障がい者を専門で受け入れてくれる施設はほとんど見つかりません。見つかっても、健常のお子さんの中に頭を下げてお願いして入れてもらう場合がほとんどです。知的障がい者の泳力の進展は健常のお子さんに比べ、かなりゆっくりとしたものです。初心者の知的障がい者がいわゆる“水慣れ”の段階で程度にもよりますが、1年も2年もかかるのに対して、健常のお子さんは1年もすれば、すいすいと泳げるひとがたくさん出てきます。そうすると年少の体の小さい初心者のお子さん方に混じって、泳力に反して体だけは大きく成長した知的障がいの子供たちが同じコースで練習することになります。知的障がいの子供たちは、先ほども言いましたように水遊びが大好きなので、ちっともかまわないのですが、年少の健常児のお母さんたちが今度はパニックになってしまいます。「うちの子どもはまだ水を怖がっているのに、また水しぶきがかかったわぁ〜。どうしましょう。」なんてことになります。そうすると、多くの知的障がい児のお母さんたちはやめてください、とはいわれないまでも、なんとなく肩身の狭い思いになって残念ながら、自主的に?水泳教室から撤退、放課後は家に閉じこもり運動はせず、家では好きな食べ物を食べまくり、そして肥満になっていく、…という悪循環になってしまっているのが現状です。
 
知的及び精神障がい者用のスポーツ施設の建設をめざしています。
知的障がい者に、自由に水遊びをして、体を動かすことが出来る環境を与えてあげることによって、肥満を防ぎ、健康を維持することができると思います。水の中では陸上で運動する何倍ものカロリーを消費することができるだけでなく、泳ぐという能力を身につける段階において、さまざまな教育的配慮のなされたプログラムを体験することができます。運動神経がよくなるだけでなく、身体的な健康作りにもなり、加えて、精神的にも心からリフレッシュすることによる、パニック障害からの解離によるケアする側からの療養効果も計り知れません。
 そこで、この12月と1月に、私たち神戸青少年支援協会は、垂水区にある舞子スイミングスクールさんの計らいで、共同企画“障害児親子体験水泳教室”をやってみることになりました。知的障がいのお子さんに、水泳指導のプロによる、水泳の楽しさを教えていただくことによって、健康つくり、生涯スポーツのきっかけになればと思っています。すでに多くの参加が見込まれています。私たちは障がい児への水泳指導に取り組み始めていますが、今度はこのプログラムを本格的に行う場所の建設が望まれます。
★神戸青少年支援協会は、身体障がいの方だけではなく、知的及び精神障がいの人たちも、健常者に気兼ねすることなく療養も兼ねて使用できるプールのあるスポーツ施設の建設を要望します。

身体障がいの方が利用できるリハビリ用スポーツ施設は神戸にもありますが、知的・精神障がいの人たちにも療養及び生涯スポーツとして利用できる施設が必要だと考えます。身体の柔軟性を養うためのフィットネススタジオと、医療ルーム、カウンセリングルーム、そしてパニックになったときに使用できる個別に構造化されたパニック回避用プレイングルームが併設されていることが、従来の一般のスポーツ施設とは異なる点です。

私たちは障がい児親子体験水泳教室を始めています。子供たちに提供できるサービスの技術を子供たちと共に磨き始めています。障がい者に実際にケアする者たちの具体的な療育のためのノウハウの蓄積が将来に渡ってぜひとも必要になるソフトの部分だと思っているからです。行政、企業のかたがたによるハードの部分と、運営ノウハウを持った市民団体の協働を目指しています。

水遊びが好きな多くの知的障がい者にとってプールプログラムによる健康維持が出来れば、生涯スポーツとしても放課後の過ごし方としても、家庭に閉じこもることなく生活する自立訓練にもなるものと考えます。もちろん、身体障がいの人にとっても、身近にスポーツ施設があることはリハビリ運動を生活に取り入れる上で非常に重要な意味を持つと思います。

グループホーム、小規模作業所、就労訓練施設、高齢者施設の併合建設

  加えて障がい者の社会的自立に向けてのグループホームや、就労訓練用の小規模作業所、そして就労施設(衣類や家具のリサイクル品の再生工場=多くの障がい者に働く機会を提供できます。)、ケアする家族たちも住める高齢者住宅があればさらにすばらしい福祉の街になると思います。いかがでしょう。こんな街が実際にあったなら、…

 福祉の分野で、日本のサービスはまだまだ足らない部分がたくさんあります。祖母の末期がんにおけるターミナルケアに際しては、イギリス滞在時に経験した、ホスピス訪問体験が非常に役に立ちました。ケアする側にも受ける側にも心穏やかな最後のときを過ごすノウハウが蓄積されていたからです。人が人として生きていくために、周りの人は何ができるのかを考え、実行し続けることが、ボランティア=無償の愛だと思っています。

 一人一人にあった、きめの細かい福祉サービスを作り出していくのは、実際に現場で闘っている人たちです。自分が、いざ弱い立場にたったときに、手を差し伸べてくれるサービスが保障されている社会なら、私たちは安心して生活することができます。しかし、現実に障がいを持った私たちの子どもや御高齢者等のいわゆる社会的弱者にとって本当に必要と思われるサービスの蓄積はまだまだ満足できるものではありません。

 私たち神戸青少年支援協会は、あの阪神淡路大震災で大きな痛手を負った時に、全国、世界中から多くの無償の愛情や、励ましをいただいた体験を持っています。一度は痛んだ経験を持つ私たちだからこそわかる、“サービスを受ける弱者からの訴え・大きな声”を出していきたいと思っています。この神戸から、本当に必要な地域に根ざした安心して暮らせる福祉サービスの輪が広がっていくことを切望してやみません。


  
 本年度からは、障害者が利用することも念頭においたスポーツ施設の建設を行政や企業のかたがたにお願いしていこうと思っています。その運動の運営資金のために、多くの支援者を増やしていくことが大切だと思っています。


一人一人が、“その気にならなければ”何も変わっていかないと思います。 一人では何もできません。しかし、誰かが始めなければ、なんにもできないと思います。心の時代です。心ある皆さん、ぜひ力を合わせて行きましょう。いっしょに行動していきましょう。連絡してください。私たちの協会を支援してください。あなたの時間を私たちに分けてください。
私たち、一(いち)家族の夢を、みんなの夢にしていきたいのです。



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